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『ブルーノ』 サシャはケンブリッジ卒のエリートです

悲劇が共感性を促すのならば、喜劇は客観性を促すものだろう。中世ヨーロッパ、王が自らの横に道化を置いて自身を冷静に見ようとしたように、特に権力者に対して笑いは効果を発揮する。では、現代においての権力とは何だろう。そして道化は何に寄り添えばいいのだろうか。まず政府が権力であることは間違いない。しかし、それだけではないはずだ。例えばマスメディア、多くの人々をアジテートし動員することが可能なこれも一つの権力だ。そして世論や民意も、民主主義国家であれば権力であるといえる。それだけではない、何らかの力をもって人を押さえつけることが出来るものならばそれは権力なのである。だとしたら、今我々が生きているこの世界には何と多くの権力がひしめき合っていることだろうか。言ってみれば人権だって人を殺し得るのだ(人道支援の下、どれだけの悲劇が起きているか想起していただきたい)。そんな世界ならば……現在に生きる道化はその全てに喧嘩を売るしかない。そして映画『ブルーノ』でゲイのオーストリアのファッションリポーター、ブルーノを「演じた」サシャ・バロン・コーエンは、その果敢なる挑戦をやってのけた現代の道化なのである。ちなみにブルーノとはサシャが前作『ボラット』のように、テレビ番組で演じている人気キャラクターの一つである。内村光良がミル姉やハンサム侍で映画を作るようなものだと考えていただければ良いだろう(やや古いか)。
彼は喧嘩を売る。マジョリティにはもちろん売る。ついでにマイノリティにだって売ってみせる。方やゲイカルチャーをバカにし方やヘテロの観衆を発狂させ、ユダヤ教徒とイスラムを仲直りさせるためにイスラエルにまで飛び「争いはやめてキリスト教徒を討ち殺しましょう」と、ユダヤ教の学者(ちなみにサシャは敬虔なユダヤ教徒である)とイスラムの指導者(ヒンドゥー呼ばわりするけど)の前で歌い彼らを白けさせる。それだけでは飽きたらず、ボランティア活動をステータスだと揶揄するし、アフリカの子供をiPodとガチで交換してみせる。結果彼は逮捕され、PLOの武装組織による声明文を受けさえしたのである。私達はそんなブルーノを笑う、苦笑いし冷笑する。しかし、よくよく考えてみればその笑いの方向は、決して彼に向けられているものではないことに気づかないだろうか?彼は道化である。そして彼が寄り添っている権力者は、他でもない私達なのだ。平然と私達が行ってきた行為、考え方が、笑いを介すことで何と滑稽なものとなるかということをサシャは示し、そして改めて客観的に見直す機会を与えてくれているのである。前作からの文明批判という指摘は今作でも当てはまるだろう。私達は生命を尊いと思う、弱者は救われなければならなず、戦争は悪だと考える。しかし救わない、私達の多くは救わないし行動もしない。リモコンでチャンネルを切り替えるかのように気持ちを切り替えて日々を生活する。悲しみ忘れる私達、笑い思い起こさせるブルーノ、そこにどんな違いがあるだろうか。いや、意識だけが高くしかし救おうとしないのならば、アフリカの子供を一人でも(iPodで)貧困から救い出したブルーノの方が、まだ神の祝福を得られるのではないだろうか。
映画はブルーノがボランティア活動に精を出し、またセクシャルマイノリティに属するアーティスト達とコラボレートする盛大(?)なフィナーレで幕を閉じる。そう、少なくとも「行動を起こしている」人々は彼を支持したのだ。


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