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『市場クロガネは稼ぎたい』梧桐柾木

 マルクスに読んでもらいたい!思わずそう唸らずにはいられなかった。

 本作をざっくり説明してしまうと、小中高一貫校「学円園学園」での学生たちの部活動での活躍を描く、というものなのだが、この『市場クロガネは稼ぎたい』が異彩を放つのはその部活動が企業(新聞部・服飾部等)という形態をとっており、そして部活動が活躍し評価されると株価も上昇するというところにある。最終的に学生が卒業までに幾ら稼いだかによって評価されるのだが、例えて言うなら子供に疑似的に働かせてお金(もちろんおもちゃの)を稼がせるテーマパーク、キッザニアをより本格的にしたものだと言えば分かりやすいだろうか。
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 主人公・市場クロガネは大企業の御曹司という生粋のボンボンで一人では何も出来ない青年なのだが、幼少の頃より社交界でその道の一流の人間と接し続けたことによって、人間の隠された才能を見抜く「神の左目」という特殊能力を開花させており、その能力を活かしながら、例えば料理を作る才能があってもマネジメントが下手な学生にその逆の才能を持った学生を紹介したりと、埋もれていた才能と才能を引き合わせ、傾いていた企業を立て直し、働くことに苦痛を感じていた人間の負担を軽減させ仕事にやりがいを取り戻させるという、いわゆる人材コンサルタント会社をその「学円園学園」で設立し、入学時に不可抗力で背負ってしまった1億の借金を返済していくのである。部活が株式会社というユニークな発想も去ることながら、市場クロガネが傾いていた店や企業を独自の視点で立て直していく様は、少年漫画であるがゆえのダイナミズムに溢れており、青年誌に掲載されている経済漫画を読むように眉間にしわを寄せる必要などは全くない。
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しかし、それ以上にこの作品の白眉は株の妖精イアラ・タミルの存在にあるといえるだろう。一昔前、この国では「芸人と物書きと株屋は家の敷居を跨ぐな」と言われるほどに、株で稼ぐ人間は何も生み出さない、虚実を操る人間として忌み嫌われていた。流石に現在ではそこまでの悪いイメージは無いとはいえ、それでも投資はあくまで個人的な金稼ぎやマネーゲームであるという受け止められ方が強く、あまり社会の役に立っていると見なされてはいないだろう。だが、このイアラ・タミルの登場回では株がなぜ賭事とは違うのか、それが何故社会的に価値のあることになるのか、それを企業と働く現場、そして投資家の目線を通して簡潔に描くのである。
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 少年漫画において「努力」という言葉は常に尊ばれてきた一方で、私達が人生で最も努力しなければならない一つの筈の「仕事」に関しては、少年漫画は着手はおろか着目すらしてはいなかった。しかしその禁足地に踏み込み少年少女たちの活躍を通して「働く」こと、それ以上に「稼ぐ」ことの価値や意義を見直していく本作は、「労働が人を疎外する」という言葉をぶっちぎりで過去の遺物にせんばかりの勢いである。物語の形式のみならず少年漫画としての価値観そのものも新しい『市場クロガネは稼ぎたい』、果たしてこれからこの作品がどう成長していくのか、最新刊では「金儲けは悪」だと主張するクーロン・リューも登場し物語はより一層深みを増していきそうな予感さえある。作品そのものも勿論、その周囲への影響が楽しみな漫画だ。
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