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『ジョン・カーター』ベタか王道か

正直、この作品は全く見る気がなかった。主人公の名前をまんま持ってきて『ジョン・カーター』という題名の捻りのなさ、原作が100年以上前のものだという埃っぽさ、日本公開前から赤字作品という噂も飛び交っていて、ディズニー110周年の大作とはいえやっちまった感が漂っていたからだ。しかし、アンドリュー・スタントンの名前を挙げられては話は変わってくる。『ウォーリー』で監督を務め、『カールじいさんの空飛ぶ家』で制作総指揮を、そして『トイ・ストーリー』シリーズで脚本を手がけている彼が本作の監督を務めているのである。さらにピクサー生え抜きのスタッフが脇を固めていて、「『トイ・ストーリー3』を超えるアニメは向こう十年出てこないぜ!」とか豪語(心中で)するほどのピクサー贔屓としては、この映画を到底無視することができなかった。
 全体の感想としては、以前どこかで『アバター』を「大金をかけて作ったハンバーガー」と評したことがあったが、この『ジョン・カーター』は技巧を凝らしたおせち料理といった印象だった。とにかく職人芸が光るというか、『トイ・ストーリー3』でもみせた、細部にわたる丁寧さが本作でも様々な部分で活きている。原作の大雑把な設定に対し、ジョン・カーターの悲痛な過去という人物像の肉付けや、異性人達の苦悩、惑星間移動の仕組み、陰の支配者であるサーン族の存在を新たに盛り込み、さらに演出に関してもジョン・カーターの馬鹿馬鹿しいまでにデフォルメされた粗暴さ(とりあえず敵は殴る!)や、全く無駄のないストーリー展開のテンポの良さ、所々に笑いどころやツッコミどころを盛り込んでくるなど、100年以上前の原作、ぶっちゃけもう白骨化しているような物に、スタントン達はみずみずしい迄の肉体を与え蘇らせているのである。また、古くさい昔のSFっぽさを残しつつも、よく見ると斬新なデザインを感じさせる火星人の衣装や小型飛行船など、常に目を楽しませてくれるし、とにかく振り返るとその芸の細かさ、観客を引き込もうとする積み上げられた工夫と努力には目を見張るものがある。さっすがピクサー相変わらずIQ高ぇ!と感嘆せずにはいられない作り込みっぷりだ。
 ただ苦言を呈すのなら、確かに一つ一つは素晴らしいのだが、その「良さ」に纏まりがなかった。つまり、そういった点を踏まえての「おせち料理」ということで……。

http://www.disney.co.jp/johncarter/
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『SHAME』恥の上塗り

物には満たされている筈なのに、どこか満たされないという矛盾を抱え、緩慢な息苦しさに苦しむ若者が自傷のような快楽にひた走る『SHAME』は、暴力を性に置き換えてはいるけれど、根底にはファイトクラブに通じるものを感じた。
大筋は、NYで働くセックス依存症のヤリチンエリートのブランドン(マイケル・ファスペンダー)のアパートメントに、男に激しく依存しリスカ癖まである妹・シシー(キャリー・マリガン)が転がり込んできて、兄妹が一緒に過ごす中でお互いの恥部を晒してしまうというものだ。妹にオナニー見られたり、妹の超依存体質を電話で知ってしまったりと、SHAME=恥という題名に偽りのないほど鑑賞中は赤面しっぱなしになってしまうのは間違いない。相原コージの『一齣マンガ宣言』のあとがきで、庵野秀明がオナニーを見られることは最高の恥辱であると書いていたけれど、そこんとこの恥ずかしさは万国共通なのだろう。(話は全く変わりますが、モンゴルのゲルで暮らしてる少年達ってオナニーどうしてるんですかね?)しかし、恥ずかしいのはあるあるでいいとして、セックス依存症は何が悪いのかという疑問が生じる。有名どころではタイガー・ウッズなんかがセックス依存症で問題になったけれど、いってしまえばあんなのは性欲が旺盛なだけだと言い換えることだってできるのだから。けれど、そこに本人が苦しんでいる、社会生活に支障が出ているという側面を当てはめたらどうだろう。そしてこの物語の主人公ブランドンは間違いなく苦しんでいる。いや、苦しんでいるというか、何か悶絶している。ブランドンはオナニー&セックスライフを満喫していると思いきや、本命を前にするとドラッグをキめても勃たないし、悶々を我慢できなくて会社のPCをウィルスまみれにしてしまう。さらに、マイケル・ファスペンダーの悶絶の演技によって、その苦悩には説得力が帯びるのである(まったく、『センチュリオン』での拷問シーンといい、『X-MEN ファーストジェネレーション』での能力発現シーンといい、実に苦悶の表情がよく似合う役者だ!)。ファスペンダーの、まるで自傷行為を思わせるような性行為の演技は、決して観客に「リア充め」などとは思わせず、障害としてのセックス依存症を苦悩の深さ理解させてくれる。
この映画は決してオナニーを見られて恥ずかしいから『SHAME』という訳なのではない。死期が違い母からの留守電に出ようとしないブランドン、映画の後半に「私たちは悪人じゃない。悪いところにいただけ」と兄に語りかけるシシー、劇中では明かされないが、愛を拒絶する兄と激しく求めようとする妹の生き方は、二人の深淵にある闇を伺わせる。二人の本当の恥部を隠すための片鱗としてのSHAME。見えないからこそ、その背後に潜む何かのおぞましさにただただ圧巻されてしまうのである。

http://shame.gaga.ne.jp/
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