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『SHORT PEACE』/「アニメ映画」ならぬ「アニメ」

 大友克洋と日本のアニメ界気鋭のクリエーターたちが集結して作り上げた短編集『SHORT PEACE』、レイトショーで自分の両隣に座っていたのが外国人だったことからも、大友克洋の9年ぶりの新作が国際的にも注目度が高かったことが伺える。
 作品の全体的な感想としては、良い意味でも悪い意味でも自意識を欠いた作品だったというところだろうか。ストーリー的には魅せる要素は全くなく、世にも奇妙な物語(しかも最近)の方がまだ脚本がしっかりしてさえいる。2話目の『GAMBO』なんかはもうかなりやばくて、内容が幼女+淫獣+妊娠だとか、それエロ漫画で何千回やられた(同人では実にその倍々!※1)ネタだよ……、とかツッコミたくなってしまうほどだった。だが、自意識を欠いているが故に、この作品には制作者側のフェティシズムが存分に盛り込まれ、それが作品の魅力にもなっているのである。特に2話目の『火要鎮(ひのようじん)』と4話目の『武器よさらば』はそのフェティシズムの塊だといえる。
 大友克洋が監督を務めた『火要鎮』は、日本の浮世絵とアニメを極限にまで融合させた一品であり、内容は全くないのだが、とにかく純粋に「絵が動く」面白さ、美しさには思わず深いため息を漏らさずにはいられない。細部にまで油断なく動く登場人物たち、鼻が低く目の細くて小さい純日本的な顔立ちの女性も色艶やかで、ネットなどでは「なぜ日本のアニメのキャラクターは白人ばかりなのか」という海外からの指摘があるが、そんな雑音も本作の前では沈黙せざるをえないだろう。また4話目の『武器よさらば』では、この監督は本当にメカを描いて動かすのがたまらなく好きなんだなぁと感心するほどに、とにかくメカの描写に愛が溢れている。人の「大好き!」が集まればここまでのものになるのかと、ここでもまたため息を漏らさずにはいられなかった。オチは題名から中盤で予想がつくが、この作品の楽しむべきところはその描写であり決して内容ではないので、そこもまた重要とはいえないだろう。
 あくまでこれは「アニメ」を楽しむ作品であって、もし貴方が「アニメ映画」を期待して劇場に足を運ぶと悪い意味で期待を裏切られることになってしまうだろう。客を意識した作品ならば圧倒的にピクサー映画の方が優れているし、そういう作品をお望みならば公開中の『モンスターズ・ユニバーシティ』を観に行った方が損はしない。しかし、この『SHORT PEACE』はそんなピクサーのスタッフたちが鑑賞した後に、「俺たちにゃこんなの作れねぇよ……」と脱帽するであろう作品なのである※2。あらゆる不純物を排した、純度の高い「アニメ」をスクリーンで鑑賞してみるというのもまた一興なのではないだろうか。……隣の外国人寝てたけどな!

※1 偏見です

※2 妄想です
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『きっと、うまくいく』/主演の人はエミネムじゃありません

まだ先があるのか!と驚愕するくらいに楽しませてくれる。良い意味で油断も隙もなかった。拷問かというくらい映画の緩急の振れ幅の短い演出は、3時間という時間を忘れて釘付けにさせ、観劇後には忘れていた疲労感が体を襲ってきたせいで、暫く動くのに難儀したほどだった。小難しい伏線や高尚なユーモアはないのだが、ここまで圧倒的な手数の乱打を喰らっては無事に済むはずもない。
 物語のあらすじは、インドの経済発展を支えているエリート大学・ICEで、変人ランチョーが織り成す大学内での当時の狂騒と、十年後の現在で、行方不明になった彼を探すという二つの時間を交互に交えながら進んでいくというものだ。競争の激化するインド社会でずば抜けた知性と感性を持ったランチョーは問い続ける、学問とは?そして人生における成功とはなにか?インド映画といえば世界的にヒットした『ムトゥ~踊るマハラジャ』が思い浮かぶが、あれはあくまで日本やハリウッドにはない独特のノリと演出が面白いのであって、珍しいものだから評価されているという側面は否めなかったが、この『きっと、うまくいく』はシモネタ満載の学園コメディーと大人になった彼らを描きながら、インド社会のみならず、先進国が抱えている社会問題に言及し、人間のあるべき姿を描いていくという、インド映画といった枠組みに収まることのないエンターテーメントなのである。スピルバーグが三回観た上に、各国でリメイクが決定されていることからも、この映画の普遍性が伺えるだろう。
 深刻なテーマを取り上げながら欝展開に陥ることなく、それどころか観客を楽しませ最後には幸せな気分にしてくれる、まさに映画のお手本のような作品で、主演のアーミル・カーンは本国で「ミスター・パーフェクト」と呼ばれるほどの役者らしいが(44歳という年齢で大学生を演じきっていたという時点で彼の凄さが分かる)、映画そのものにも「パーフェクト!」という賛辞を贈りたくなってしまうほどだ。今後「好きな映画は?」と問われた際には、「いろいろあるけれど、ベストを一つ挙げるとするなら『3 Idiots』だね」と答える人間が大勢出てきてもおかしくはない、人々の記憶に残る名作だと言っても過褒ではないだろう。

http://www.youtube.com/watch?v=LqT4ShUM3MY
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