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思い出し日記①安酒でも酔いは本物だから

「善人であるほど酒が旨い」、そういったのはドフトエスキーだっただろうか。そして私の人生で唯一の親友といえる彼は、激しくそんな言葉の似合う男だった。
 私と彼は仕事明けによく飲みに行った。お互いに地方出身者であるためか、飲みが進んでいくとお互いに今後の身の振り方を話すのだが、お互いに夢を持ち上京し、しかしそれの実現が難しいと分かった今、肉体労働に勤しみながら日銭を稼ぎ、楽しい話題など何もないが、それを笑ってやり過ごすため、私たちはただひたすらに日々の飲み込めぬモノを酒と一緒に飲み込むのだった。
 ふと以前に彼の家が代々続く建設会社だということを知っていたので何気なく「何だったら実家で働けばいいじゃないか」と提案してみたところ彼の表情はあまり浮かない様子でこう語った。
「民主党に政権が移ってからきついんだよね、ウチ。小沢のおかげでギリギリもってるらしいけど……政権変わっただけでここまで変わるとはねぇ……。」
 当時は「政権交代」というにマスメディアの煽りによって民主党が政権を獲得したばかりだったが、建設業を営んでいた東北の彼の実家はそのせいでかなりの打撃を受けていたのだという。
「なんか、希望のある話しが聞きてぇよな……」
「うん、民主党の手腕もかなり叩かれてるから、多分次の選挙とかは少数政党とかが躍進するって言われてるよ。そうすれば、もっと地方にあった政党とかが勝つんじゃない?」
 彼は顔を赤らめたまま、よくワカンねぇなとジョッキを飲み干した。そしてそれから暫くして、彼の実家が倒産してしまった旨を聞いたのである。
「だって政権交代って見てみたいじゃないですか~」
 民主党に投票したという女性がテレビインタビューにこう答えていた。この光景は彼にはどう見えただろうか。飲めないモノを飲み込もうとするために酒をあおるというのならば、私より酒の量が多かった彼は、きっと私より飲み込めないモノが多かったのだろう。
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